ゴルゴ13は原発事故のメルトダウンによるチャイナシンドロームから
アメリカ西海岸を救ったことがあります。
原発事故を扱った「2万5千年の荒野」は、
東日本大震災の福島第一原発事故を予言している作品ともいわれています。
ゴルゴが福島第一原発のエンジニアから依頼を受けていたら、
今日の福島の放射能汚染はなかっただろうと思います。
ゴルゴが救った原子力発電所事故とゴルゴが魅せた男っぷりを徹底解説します。
ゴルゴ13と原発、2万5千年の荒野は近未来を予言か?!
おそばやさんで見つけた1983年のゴルゴ13。タイトルは「2万5千年の荒野」。 pic.twitter.com/PEEtTI1wGW
— 堀内正徳 (@jiroasakawa) July 20, 2013
ゴルゴが原発事故を食い止めた「2万5千年の荒野」(『ゴルゴ13』第64巻第223話)は
ゴルゴ13の傑作として有名な作品です。
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ロスアンゼルス近郊の原子力発電所が、電力需要の増大を理由に安全が軽視されたまま
運転を開始して事故が発生します。
技術部門の責任者バリーは再三にわたって運転の延期を申し出ましたが、
発電所の上層部は彼の進言を聞かず運転を強行したのです。
実はこの「2万5千の荒野」は1984年に発表された作品です。
チェルノブイリ原発事故は1986年に発生、
東日本大震災での福島第一原子力発電所事故は2011年です。
原子力発電所の安全神話や経済性、政治的な事情で安全が軽視されている点など
「2万5千年の荒野」には後の2つの原発事故の「予言」であり
「警告の鐘」を鳴らしていたともとれます。
また作中では、外部電源が喪失して自家発電機に切り替えようとするも、
オイル点検を怠っていて発電機の始動が遅れるという、
現実の事故と酷似しているシーンもあります。
原発事故を扱ったゴルゴ13の名エピソード『2万5千年の荒野』でも、停電による外部電源喪失から自家発電器をスタートさせようとするも、オイルのチェックを忘れてたために起動が遅れた予言的なシーンがあった。 pic.twitter.com/C0JMnE88r4
— 如月 宗一郎 (@S_kisaragi) March 1, 2015
作者のさいとう・たかを先生は「書いていてゾッとするような話だった」 と
語っています。
時の国際情勢をうまく作品に取り込む「ゴルゴ13」では「2万5千年の荒野」のような
「未来予想図」になってしまう作品も多々あるのではないでしょうか。
原発事故で2万5千年は荒野になる
「2万5千年の荒野」では運転開始直後から原子炉内の温度と圧力が上昇し、
原子炉は制御不能の状態となり、メルトダウン(燃料棒溶融)の危機に見舞われます。
メルトダウンすると、広島型原爆の400倍もの放射能が放出されてしまい、
広い範囲が放射能に汚染され、動物だけでく植物も住めない世界になってしまいます。
「2万5千年の荒野」の「2万5千年」は、原子力発電所から放出される「プルトニウム239」の
半減期が2万5千年であることからきています。
ゴルゴ13と原発事故、泣けるシーンはこれ
フクシマ50なんか観なくてもゴルゴ13の『2万5千年の荒野』読めば充分。 pic.twitter.com/5Kj4u52DMt
— 勅使川原克典 (@tesssyyy) March 8, 2020
「2万5千年の荒野」でのゴルゴの仕事です。
原子力発電所で事故が起きるなか、原発開業セレモニーの最中に電力会社の会長が狙撃されます。
会長が死亡した場所から遠く離れたところにアサルトライフルM16をもっているゴルゴ13を
偶然にも目撃した原発技師のバリーは、ゴルゴが神業をもつスナイパーだと確信します。
そして、原子炉のメルトダウンを食い止めるには、原子炉内にはいり、
水蒸気で詰まった冷却水パイプを撃ち抜くという解決策を見出し、
実行できるのはゴルゴしかいないと考えます。
バリーは会長狙撃の目撃者の命と50万ドルでゴルゴに狙撃を依頼します。
ゴルゴはバリーの気迫から、ただならぬ事態と感じ入ったのか、
依頼を受け店主が逃げ出し無人の銃砲店から銃を拝借して、狙撃に向かいます。
男っぷり炸裂!泣けるシーン
フクシマ50なんか観なくてもゴルゴ13の『2万5千年の荒野』読めば充分。 pic.twitter.com/5Kj4u52DMt
— 勅使川原克典 (@tesssyyy) March 8, 2020
メルトダウンを食い止めようと、バリーの仲間達が原子炉内で被爆をものともせずに、
足場を作る作業を黙々と見守るゴルゴ。
バリーが寸分も狂いはないとする図面を頭に刻み込み、ゴルゴはバリーと共に原子炉内に入り、
バリーの仲間の技師たちが組んだ足場に立ち、水蒸気で何も見えないなか、
頭の中の図面だけを頼りに見えないパイプを撃ちぬきました。
狙撃が成功しメルトダウンが食い止められたことを確信したバリーは、
会長狙撃の目撃者は自分で、原発の技術責任者としての責任をとって防護マスクを外し
原子炉と共に命を投げ出すことを伝えます。
死にゆくバリーが被爆で覚束ない手でタバコを吸おうとすると、
自分も被爆の危険が増すなか、ゴルゴは黙ってバリーのタバコに火をつけてあげます。
ガイガーカウンターが鳴り響く中での、仕事に命を投じた男へのリスペクトが胸を熱くさせます。
ゴルゴ13が原発で狙撃を成功させたが「ゼロイン」修正は?
「2万5千年の荒野」は社会性、先見性、ゴルゴの男っぷり、
どれをとっても名作に恥じない作品ですが、ひとつ気になる点があります。
それはゴルゴが狙撃に欠かせない「ゼロイン」調整をしていない点です。
ゴルゴ13の愛用するM16はアサルトライフルで狙撃銃
ではない。これは連載開始時の資料で提供してもらった
「長物」が当時最新モデルガンのM16だったからである。
だが現実にM16の後継M4ベースの狙撃銃が開発されて
おり、あながち間違いでもなくなった。#銃器知らない人が嘘だと思う本当のことを言え pic.twitter.com/EZf9sdsC1a— ますぞー(Masuzoh) (@Masuzoh_twt) June 18, 2019
「ゼロイン」修正とは弾丸が標的に当たるよう銃の照準を調整をすることです。
照準器で狙いを定めて試射し、着弾点と狙いのずれから照準器を調整していくことです。
はじめて使う銃であれば必ず「ゼロイン」修正をしないと狙ったところにあてることはできません。
ゴルゴはゼロイン修正をしないでも狙いを外さない神業だということになります。
ゴルゴ13と原発 まとめ
1 2万5千年の荒野は福島第一原発事故の予言
2 原子炉内でもゴルゴの狙撃は神業
3 仕事に殉じて死にゆくものへのリスペクト
最期まで読んでいただきありがとうございます。
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